元自衛官が歩兵の本領レビュー
歩兵の本領という短編集をご存知でしょうか。
人情味に定評のある浅田次郎さんが、バブル期の自衛隊を実体験と共に書いた本です。
この本はね、こんな人に読んでほしいです。
- 自衛官、自衛隊経験者、自衛隊に入ろうとしている方
- 身内に自衛官の知り合いがいる方
- 仲間というものを本当に理解し大切にしたい方
- 強さの中にある優しさを知り涙を流したい方
自衛隊って、文字通り柵に囲まれていて外から切り離されていますよね。
自衛隊を外から見ても中の様子は分からない。
中ではどんな世界が繰り広げられ、どんな生活をしているのかって想像ができませんよね。
浅田次郎さんの歩兵の本領では、バブルの時の自衛隊の様子を、浅田さんの得意な人情味あふれるタッチで優しく書いています。
自衛隊の発足以来ずっと変わらない方針てなんだかご存知ですか?
方針ていうと難しい言葉になってしまいますので
自衛隊の一番大事にしていることって何だと思いますか?
それはたった一人の落ちこぼれも出さない。っていうことです。
そんな本のレビューを僕なりの言葉で紹介したいと思います。
自衛隊を退職して闇の中に落とされた
ごめんなさい、自分語りを少しします。
僕は自衛隊を怪我・病気で退職したんですね。僕にとって夢だった通訳にもなれて訓練は厳しかったけど自衛隊生活は天職でした。
世界で発生するであろうPKOや災害派遣に日本代表の通訳としていつでも行けるように、強い希望を持って英語の勉強と各国の文化の勉強を欠かさず続けていました。
しかし、身体的な理由で辞めざるをえなくなり、退職した後は1年間ほど落ち込む時期が続き日陰者ののような生活をしながら色のない世界で過ごしました。
退職後は人生のどこに希望を見出すか分からず、闇の中をさまよっていました。
その時に読んで救われた本が浅田次郎さんの歩兵の本領です。
浅田次郎さんのやさしさに救われた
“それでも落ちこぼれは作らない。一人でも足を引っ張るとみんなの命が危なくなる。みんなで引っ張りあげてやるのだ。”
“戦争を放棄した国家に存在する矛盾した自衛隊で培われる歩兵の本領とは、心ある人間、他人の痛みのわかる、礼節をわきまえた人間の本領なのだ。それは挙手の敬礼を受けるに値する。”
僕は特に、最後に退職する隊員に対して、徒手格闘の練習相手になってボコボコにしてから退職させてやる班長の話が好きだ。
わだかまりのないまま、自衛隊なんて辞めてせいせいすらぁ!との気持ちにさせてやって追い出してやる優しさが、自衛隊をすごくうまく表現しているなと思った。
僕が自衛隊で得たものはなんだったのか、自衛隊は何が良くて何が悪かったか分からないまま退職したのでわだかまりが残った。
僕もこの歩兵の本領のように、ボコボコにされて営内を去ればわだかまりがなかったのかも知れない。
しかし、自分の気持ちや自衛隊が僕に教えてくれたことへの感謝をこの本で再認識することができた。
僕が自衛隊で学んだ人生で一番の訓は、どんな時でもたった一人の落ちこぼれも出さないこと。
これに尽きると思うんです。
一人のおちこぼれを出してしまうと全員死んでしまうからこそ仲間は絶対に捨てない。
最後まで全員で走りきる。
そのためには一人一人を尊重し、徹底的に理解する。
戦場で命を預けあうには、腹の底からお互いを信用しないといけないんです。
最後に退職するときに僕が中隊長に掛けてもらった言葉を紹介したいと思います。
この言葉のおかげで僕は今も生きていられる気がするんです。
“変わりゆく時代の中で、反動と呼ばれようが偏屈者と罵られようが、かつて軍人であった誇りを捨ててはならなかった。
銃も剣も国に返納したが、返納してはならぬ歩兵の本領を、老いても尽きぬ背骨に、私はしっかりと刻み付けていた。”
作家の役目ってのはたった一つなのかもしれない。
悩んでいるのはあなただけじゃないよ、と文書を通じて誰かに伝えること。
以上、自衛隊を経験した一人の男として、実体験と重ねながら
浅田次郎さんの歩兵の本領をレビューしてみました。
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